ザ・ワン・デバイス
著者:ブライアン・マーチャント
出版社:ダイヤモンド社(2019/7/11)
形式:単行本(¥2,200)、Kindle(¥1,782)
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本
スマホの代名詞とも言えるAppleのiPhone。そのiPhoneが誕生し、製造される過程を緻密に追ったルポとなっている一冊です。
Appleを題材にした本は非常に多く、そしてほとんどの書籍で共通して取り上げられるのが創設者であるスティーブ・ジョブズのカリスマ性ではないかと思います。
僕自身もスティーブ・ジョブズの伝記「スティーブ・ジョブズ1&2」をはじめとして何冊か読んできました。
しかし多くは創業者であるスティーブ・ジョブズというキャラクターに焦点を当て、類稀なるリーダーシップのもと、魔法のように誰もが欲しがる商品を次々と発表し、現在のAppleを作ってきた英雄のように描かれている印象でした。
本書ではそういったアプローチからは距離を置き、Appleの画期的な製品を生み出している本当の立役者たちは誰だったのか。
1人の天才が生み出したものではなく、たくさんの知られざる天才たちのクリエイティブの結晶が今のAppleを築き上げたのではないか。
この仮定のもと「iPhone」の開発されてきた経緯を明らかにすることで証明しよう、というドキュメンタリーです。
今でこそ当たり前になったiPhoneのタッチパネルですが、その「タ」の字もない状態から話が始まります。
新しいUIを作るべく、ある1つのチームが紙とプロジェクターを使ったアナログな形で試行錯誤しながら、タッチパネルのイメージを作っていきます。
この時点ではそもそもiPhoneという電話になることすら決まっておらず、もちろんiPadなんかもありませんでした。
スティーブ・ジョブズに中途半端なものを見せたら即却下、そして「そんな無駄なことに時間を使うな」とチームの活動自体が止められてしまい、自分たちのアイデアが日の目を見ることなく潰えてしまう…。
本当にゼロの地点から、社内政治も交えながら話しは進んでいきます。
この現在の「iOS」のUIが発明されていくところから、iPhoneとして形を成していく過程、AppStoreによって世界中の開発者がiOSのアプリ開発に参加できるエコシステムを構築した話し。
さらにリチウムイオン電池の原料である「リチウム」の採掘場を探るためにチリのアタカマ砂漠へ行ったり、iPhoneのカメラの手ブレ補正するシステムを開発した日本人の話し、低消費電力で高効率なiPhoneの頭脳となるARMプロセッサを開発したARM社の2人のエンジニアの話しなど、iPhoneに詰まっているソフトウェア/ハードウェアのどちらも世界中を移動しながら取材した内容が詰まっています。
読んでいて何度も「ここまでやるか!」という徹底ぶりに、驚きの連続でした。
中でもiPhoneを製造する鴻海(ホンハイ)の組み立て工場に潜入取材した話しは本当に読んでいて過酷。
日本では信じられない長時間労働と求められる高水準のスキル、安い給料。
工場内の実態を知っていたら絶対に働きたいとは思えません。
原材料から組み立てまで、1台のiPhoneを製造するために必要な労力(というより「犠牲」の方がしっくりくるかも)が分かります。
率直に言ってショッキングな事実です。
ただ、iPhoneだけじゃなくAndroidのスマホも同じような状況なんじゃないかな…と思います。
電池やガラスなどの原材料で共通するものは多いので。
本書はタイトルに偽りなくiPhoneという1つのデバイスについて、どのように開発され製造されているかを明示することで、私たちが当たり前のように使っているスマホの重みを教えてくれる一冊となっていました。
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