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「さざなみのよる」を読んだ

「さざなみのよる」を読んだ

「野ブタ。をプロデュース」「昨夜のカレー 明日のパン」などの脚本で有名な木皿泉さんの著書、「さざなみのよる」を読みました。要約と感想。ネタバレは極力ないようにしています。

内容の要約

癌を患い、間も無く死を迎えるナスミ。生前に関わりのあった人たちが、1人の人間の死を通して自分の人生に向き合っていく多視点の物語。

ナスミが大好きだった漫画雑誌を、亡くなった直後も声は届くと信じ読み聞かせる姉の鷹子。
自分に嫌がらせをする姑にうんざりし、ナスミに「全ての人の幸せを願ってごらん」と言われても自分を嫌う人の幸せまでは素直に願えない、妹の月美。
ナスミと人のイメージを「み」や「タ」などに例えて遊んでいて旦那の日出男(ひでお)。
父の叔母で、本当は「茄子(なすび)」と名付けようとして猛反対され渋々「ナスミ」と名付けることになった笑子(えみこ)。
中学時代にナスミと2人で東京へ家でを企てて未遂に終わった清二。
37年前に、まだ幼かったナスミを誘拐しようとしたけどギリギリのところで思いとどまり、人生をやり直すきっかけを頂いたと感謝の手紙を送る謎の男。
大事なメッセージを託された、ナスミが東京に勤めていたときの会社の後輩。
こっそり家出しようとしたとき、駅のプラットホームでナスミにバッタリと会い、ベンチで話しているうちに家出したくなった本当の理由に気づき、もう一度生活と向き合うことに決めた清二の妻、愛子。
ナスミが好きだった漫画の作者であり、人の涙を収集することが趣味なちょっと変わったところのある樹王光林(じゅおうこうりん)。
これまで何度も道を誤りながらもナスミの言葉に勇気づけられ、「自分の人生に絶望しないで生きていこう」と前向きに歩きはじめた東京時代の同僚、好江(よしえ)。
8歳のときから「命」が宿ることについて真剣に考え続けている愛子の娘、光(ひかり)。

そして、亡くなった小学校時代の友人の葬式に参加し、過去の記憶を辿りながら、まだこの先も自分の人生が続いていくことを実感する、55年が経過した光。

自分も、家族や友人も、家やいつも行くスーパーマーケットも、そこで生きた人たちの気持ちも、ゆるやかに、しかし確実に失われて行く。
失われていくからこそ、当たり前に感じる日常こそが「幸せ」なのかもしれないと感謝の気持ちが溢れてくる一冊。

感想

冒頭から暗い雰囲気で始まり、登場人物たちの繰り返される同じような毎日がただただ繰り広げられていきます。
それでいて波乱万丈な展開も特にありませんが、皆がナスミから受け取ったもので、それぞれの人生を前向きに歩こうと変化していく。
1人の人間が周りの人間と関わることで、水上に広がる波紋のようにちょっとずつ、しかし確かに影響を及ぼしていく。

そんな様子をみていて、普通の生活を送っている自分自身もいつかは確実に死を迎えること、そして存在するものがいずれ迎える「終わり」を改めて意識せざるを得なくなります。
いずれ終わるからこそ、今を噛み締めて生きていこうと爽やかな気持ちになりました。

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