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「人類を前に進めたい」を読んだ

「人類を前に進めたい」を読んだ

メールマガジン「Daily PLANETS」で連載されていた、チームラボ代表・猪子寿之さんと評論家・宇野常寛さんによる、チームラボの目指す「境界のない世界」についての対談がまとまった一冊。

各章ごとのポイントと感想

ここでは、各章ごとにポイントとして捉えたメッセージの抜粋と感想を紹介していきます。

Chapter1 「作品」の境界をなくしたい

テクノロジーを使った物理的な境界のないアートを通して、日常の中でストレスに感じがちな他者をポジティブに捉えなおす。

これは素敵な発想の転換。
1つの建物の中だけじゃなく、屋外も含めて実現できたら…と想像すると楽しくなってくる。

最近電車に乗る機会が多かったけど、この電車こそ周りの人をネガティブに捉えがちだと思ってて(自分はそう)、この空間ももしかしたら考え方次第でポジティブな空間にすることもできるかも、なんて考えてみる。
まあ、満員電車には乗らないに越したことはなさそうだけど…。

Chapter1を読んでいて気づいた。
本書のレイアウトはテキストの横幅が少ないからか読みやすい。
サササーっと軽快に進んでいく。

本書P14、P15より写真引用

そして写真のインパクトよ…。
良き。

Chapter2 デジタルの力で「自然」と呼応したい

全ての物質的な人工物は、基本的に自然を破壊して作られているので自然とは相性が良くない。
でも、デジタルを使った表現は自然を物理的に破壊しないから実はすごく相性が良い。

猪子さんの「自然はもともと綺麗だから、デジタル表現を足すと勝てそう」という考え方は面白い。

自分はWeb系の仕事をしていながらも、実はデジタルで完結した世界(ディスプレイの中の世界)には魅力を感じていない。
でも自然とデジタルを足すのは面白いのかもしれない。
これはちょっと自分でもやってみても良いような気がする。

Chapter3 〈アート〉の価値を更新したい

チームラボのシリコンバレーでの展示が大盛況だったところから、アメリカの美術に対する付き合い方の歴史や、美術にあまり関心がないとされてきたシリコンバレーでチームラボの展示が好評だった理由を紐解く。

この章はもう…ただただ「なるほどなぁ…」という感じだった。

特に、シリコンバレーのようなテクノロジーの可能性を信じていて、サイバースペースに新しいフロンティアを開拓しようとする人たちが集まる場所だからこそ、チームラボの展示が受け入れられたというところ。

どこからどこまでが空間の境界線なのか分からなくなる感じ、一度は体験してみたい。

Chapter4 「身体」の境界をなくしたい

身体を動かして参加できる展示が出てきて、頭で分かった気になるのではなく身体を通じて空間を体験する。

大阪の展示に触れた宇野さんが、「音は耳だけじゃなく他の感覚と併せて聴いてることに気づいた」と言ってるところが印象的。

展示が今までの視覚的な「観る・眺める」から、身体的に「体感する」にシフトしていって、途端にダイナミックになっている。
まだまだ序盤なのに展開が速い。
これ、本書を読み終える頃にはどんな展開になってるのか本当に想像がつかない。

Chapter5 生命と時間のスケールを知覚したい

猪子さんの地元・徳島の渓谷を舞台に、テクノロジーの力を借りて人が普段は認識することのできない自然の美しさを体感することができる作品を紹介。
作り込むよりも、シンプルなものの方が実は自然本来のスケール感や美しさをダイレクトに感じられる。

本書P92、P93より写真引用

こちらの写真のインパクトがやばい。

本書は読んでると、不意に「ドーーン!!」と見開きで作品の写真が飛び込んでくるのが面白い。

でもこのページの写真が今のところ1番インパクト強い。
カオスな雰囲気がゾクゾクする。

自分が普段見ている景色も、実は本来持つ自然の魅力を全然捉えられてないんじゃないか、という気づき。
悔しさもあるし、まだ気づいていない姿があることに楽しみもある。
でもいまから普通に見に行っても、今までと同じ景色しか見れないんじゃないかという虚しさもある。

Chapter6 「身体の知性」を更新したい

身体の知性について。
身体を動かすことで感じられたり、呼び起こすことができる「知」がある。
「歩く」ことは身体的な知を解放する手段として有効なのに、いまは「止まる」「走る」のいずれかになってしまっている。

身体を動かすことで感じられる「知」、確かに存在すると思う。
引きこもりがちな自分も、外を散歩してみると「なんで籠ってたんだろ」て感じることは多いし、段々と考えることが楽しくなってくる。
それはきっと、自分が言葉にできない高度な知性が外には広がっているってことなのかもしれない。

スティーブ・ジョブズも考えごとをするときは散歩をしていたとか、そんな話しがあった気がする。

この身体で感じられる知性を普段から意識することが、もしかしたらChapter5の「普段自分では感じることのできない自然の魅力」に気づくことのヒントかも。

Chapter7 「地方」のポテンシャルを引き出したい

地元・徳島を舞台に、アートを通して地理と人を接続する。
徳島に限らず、日本の地方は自然が多く残っていて交通インフラも整っているので、海外からの視点でみても実はものすごく可能性がある。

徳島市には川がたくさん通っていて水都だということ、一度旅行したことはあったけど全然知らなかった。

本書は展示を行った土地にある歴史や魅力の解説もあるので、作品が気になるのはもちろんだけど、純粋にその土地に行ってみたくなる。
徳島も改めてじっくり周ってみたいけど、まだ行ったことのない土地も周りたいなぁ…。

Chapter8 都市に未来を提示したい

シンガポールや上海での展示から、展示で使用する建物が都市の中でどのような役割を担ってきたか、そして今後はアートの展示場所としてどのような価値を提供していくかが語られる。

上海の燃油タンクをリノベーションして現代美術館として使用する意味を述べる箇所、都市の歴史や将来と結びついていて面白かった。
そしてこの建物が数十年後にはまた違う役割を担っているかもしれないと考えると、いまの美術館であることも長期的には仮初の姿なのかな、と。
都市の興隆ともリンクするはず。

Chapter9 境界のないものをテクノロジーで再現したい

チームラボの掲げるコンセプト「境界のない世界」には、グローバル社会において「境界のない世界」を日々体感している人はもちろん、していない人にもアートによる擬似体験を通じて「境界が曖昧なことの心地良さ」を感じてもらいたいという願いが込められている。
経済的な格差が広がっていて「境界のない世界」を実感しづらくなっているからこそ、言葉ではなくアートの力で「境界のない世界」の心地良さを体感できるようにする。

読んでいると、本を読むこととは矛盾して「本書をじっくり読むより、とにかく現地に行かなければ」みたいな気持ちになってくる。
その場でこそ体感できることに惹かれてるということなのかも。

これ自体は本書の中で繰り返し語られていることで、頭で分かるだけじゃ全く不十分で、身体を使って「場」を知る必要がある。
それはもう、一箇所に留まって本やディスプレイから情報を得て納得している場合じゃないというメッセージのように感じる。

Chapter10 「自然」の本当の美しさを可視化したい

自然や歴史は、人が想像し難いぐらい膨大な時間が積み重なってできたもの。
なかなかその時間を実感することはできない。
そこで、チームラボは「デジタイズド ネイチャー」というテクノロジーの力を使って、時間をも体感できるような作品を作っている。

語られてきた歴史がある通り、現在までに気の遠くなるような長い時間が経過してきたという事実は頭ではわかるけど、たしかに「どのくらいの長さか」を実感することは難しい。
というか、自分が今まで生きてきた時間すら圧縮されていて長さをうまくイメージできない。
それなのに、時間の長さを体感できるなんて…。
御船山楽園の展示を観に行ってみたい…。

チームラボの作品は、自然にデジタル表現を重ね合わせていく形がメインだと思っていたから、そのアウトプットには人工的な光(照明)が必要になり、光が際立つ夜の展示がメインとなるのは必然と考えていた。
ただ、本章では昼の太陽が出ている屋外でも展示を行える可能性が示されている。
メガリス、すごそう。

Chapter11 「パブリック」と「パーソナル」を更新したい

トレードオフになりがちな公共的「パブリック」と個人的な「パーソナル」において、チームラボではパーソナルなアクションをパブリックの心地良さに組み込むことで両立させるアプローチをとる。

パブリックな場において個人的なことは抑えることが良しとされる文化は、日本だと特に当てはまる感じがする。
そこへ、いかに個人的なこと(つまり当事者だけの自己満足に近いもの)を多数の人が集まった場所でもポジティブに捉えられるものにしていくのか。
すごく大きなテーマ。

中国の深圳でのプロジェクトでは、この「パーソナル」が「パブリック」にとっても価値を感じられるようにする試みは、都市という大規模な形で展開されるみたいだけど、ここでの成果が日本にどのようにフィードバックされていくのかが今から楽しみ。

Chapter12 「飲食」そのものをアートにしたい

お茶の中にだけアートを浮かび上がらせることで、「アートを飲む」という体験をすることができる。
この体験はそれ自体の非日常性だけでなく、本来お茶が持つ社交的な文化を蘇らせる意味も持つ。
飲食のもつ、日常と非日常について語る。

自分は普段から急須でお茶を煎れたり、ペットボトルでお茶を飲んだりシーンによって飲み分けているけど、お茶が本来は社交的な場で飲まれていたことを置き去りにして、孤独に淡々と飲んでいる。
(普通に飲み物として美味しいから)
お茶もパブリックとパーソナルを越境できるなんて、ちょっと思いもしなかった。

本書は「言われてみたら、たしかに」が満ち満ちていて最高。

あと、このパートで宇野さんの言っている「筋トレは肉食で非日常、ランニングは穀物で日常」という言葉はすごくしっくりきていて、自分もこの感覚でどちらも生活に取り入れるようにしていたことに気がついた。
この「感じ」も言葉にできるのはすごい。

Chapter13 「世界」の境界をなくしたい

インターネットで繋がって、交通手段もグッと増えてグローバル化が進んでも、実際にはなかなか境界がなくならない世界。
多様なものが外側から雪崩れ込むようになって、むしろ様化の境界は濃くなったようにすら感じる。
その中で、パブリックとパーソナル、価値観や文化、2次元と3次元のような境界を、アートによって壊していこうとするチームラボの根底にある強い意志について語られる。

本章は、チームラボがアートを製作してきた理由をこ最も強く感じられるパート。
テクノロジーによって個々人の趣向に沿ったパーソナライズが進み、むしろ境界は濃くなってきているようにすら感じるぐらいだけど、そこを飛び越える強い意志、根底にある想いを感じた。

パリの話しの中で感じた街の懐の広さや、そこで暮らす人々の様子が「境界のない世界」を体現しているようでめちゃくちゃ良いなって思った。
現地に行ってみたくなる。

Chapter14 人類を前に進めたい

「チームラボプラネッツ」の展示は視覚・聴覚のみならず、触覚など身体的に境界の認識を揺るがす。
身体を動かしながらアートを体感することで、自分の持つ認識の曖昧さに気づき、新しい物の見方に気がつく可能性を示していく。

自分の持つ認識って、今まで過ごしてきた時間の中で見て触れたものを通して固まっていくものだと思う。
そうやって形づくられた自分にとっての「当たり前」を、チームラボの作品は問答無用に破壊する。
そこまでしてようやく、新しいものの見方に気がつけるのかもしれない。

作品に触れた後は、もう以前の感覚には戻ることができない。
これこそがまさしくアートなんだな、と改めて考えずにいられない。
すごいワクワクする。

以上が本書のポイントの抜粋と感想でした。
チームラボが目指す「境界のない世界」が具体的になにを実現していくのか、1つずつ頭の中でイメージをしながら読み進めることができました。
「境界のない世界」は特定の境界を指すものではなく、公共と個人、国境、自然と文化、時間と非常に多岐に渡っていて、そのスケール感にただただ驚きの連続です。

自分は世界の真実を何も知らず、かつ捉えられていなかったんだな、と。
今はもう、どうしたらいいのか分からない迷子になったような感覚と、世界の奥行きに対する面白さと、双方が鬩ぎ合っている。
そんな感じです。

身の周りのことを捉える解像度を上げていくにはどうしたらいいか。
そんなことを考えるきっかけになる一冊なのだと思います。

いま一度、あえて言うと。
最高の一冊でした。

ちなみに一般発売は11月21日ですが、BASEのPLANETS直販なら発売前に購入可能です。
すぐにでも読みたい方は直販からどうぞ。

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