「希望の国のエクソダス」を読んだ

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「希望の国のエクソダス」を読んだ

村上龍さんの著書「希望の国のエクソダス」の本書要約と感想です。要約部分はネタバレを含むため注意。

目次

本書の要約

2001年6月初旬、パキスタンで日本人の少年が負傷したというニュースが日本中を賑わせる。

CNNの記者が現地の様子を取材していたら、もう1人の日本人と申し出た少年が英語で取材に応じた。
彼は「日本はもはや何もない、死んだ国だ」と言い放ち、現地でパシュトゥーンの一員として活動していると語る。
CNN記者の「君が日本人である証拠は?」との問いに対し、「ナマムギ、マガゴメ、ナマタマゴ」とだけ言ってその場を後にした。

この事件は日本中で話題になり、自発的に日本を出てパキスタンへ向かった少年の行動を引き金に、自分の国に疑問を抱き続けた全国数十万人の中学生が一斉に不登校になる。

事件の詳細を取材するために、フリーで記者をやっている関口が急遽パキスタンへ向かう。
タイのバンコク経由でパキスタンへ向かう飛行機には「自分もパキスタンに行く」と考えた中学生もたくさん搭乗しており、その中の1人である中村と名乗る少年が関口に声をかける。

タイで乗り継ぎ時間を関口と中村は一緒に過ごし、話していく中で中村はパキスタン行きを思い留まる。
そう判断したタイミングで、ちょうどパキスタンの取材ビザは国から発行されないことが分かり、関口も一緒に日本へUターンすることになった。

日本に戻った後、不登校の中学生が学校へ押し寄せてデモを行う事案が発生する。
関口は取材のため、中村の通う学校へ足を運ぶ。

連絡をとった関口と中村は学校で再会し、中村たち不登校中学生のリーダー的存在であるポンちゃんこと楠田や、仲間たちと合流する。
そしてポンちゃんから大勢の中学生が不登校になった理由やデモをすることにした経緯を聞く。
この取材をきっかけに、関口は中学生グループと連絡を取り合うようになっていく。

その後、全国に散らばる中学生グループはポンちゃんや中村を中心にASUNARO(アスナロ)と言う組織を作り、全国で起こっていることを映像にして配信、またはCNNやBBCなど海外メディアへ販売する事業を起こす。
その後も使っていないホテルを買い取って職業訓練施設を作り、ソフトウェア開発やネット探偵など様々な事業を起こしていく。

さらに3年後、北海道へ拠点を移す。
風力発電所を設立してエネルギーを確保し、地域通貨イクスを発行し、さらに特別養護施設「UBASUTE(ウバステ)」を設立する。
北海道の特定の場所を軸に、独自のコミュニティ、経済圏を作って行く。

関口も妻子と共に北海道を訪れ、あまりにも快適なので移住するか本気で考え始める…。

以上が本書の要約です。

感想

本書の単行本は2000年7月に発行されました。
およそ18年前の作品にも関わらず、あまりにも今の日本に起こっているようなことが描かれていて驚きました。

昨年話題になった仮想通貨、トークンエコノミー、オンラインサロンをはじめとする小さい経済圏やコミュニティの運営。
この全てが中学生の集団によって実装された社会を明快に描き出しています。

「あとがき」で述べられている通り、本作品は著者による教育改革を起こす1つの案(ブループリント)です。
数多くの専門家に取材を重ね、編み出された案は「全国規模で中学生が一斉に不登校(ストライキ)する」と内容で最初はギョッとしますが、全くのフィクションと言い切れない妙なリアリティがあります。
それは先述した通り、昨今の日本で話題になるトピックが詰まっているから。

集団で行動を起こしたのが「中学生」である点もポイントです。
20代以降の「社会はこう言うものだ」と言う考えが固まっておらず、ただ純粋に身の回りにあるもの(テクノロジー)を呼吸するかのように扱うことができる。
そして疑問に対して純粋に向き合う。
そのバランスが、ちょうど中学生ぐらいの年代だったのではないでしょうか。

構想から含めると約20年も前の作品が、今読んでも技術的に全く古臭さを感じない内容になっている。
この事実を踏まえて、著者の本書以降の作品を追ってみるきっかけとしては十分すぎる理由だと思いました。
本書の取材内容がまとまった「取材ノート」で理解を深めつつ、以降の作品を追っていく予定です。

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