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「デジタルネイチャー」を読んだ

前著の「魔法の世紀」から約2年と半年。その続編にあたる新著「デジタルネイチャー」を読みました。前著から提唱されてきた「デジタルネイチャー化する世界」を、落合陽一さんのビジョンを通して垣間見ることのできる一冊。

本書の要約

まずはざっくりと、目次を追いながら本書の全容を俯瞰していきます。

まえがき

映画のワンシーンのような「まえがき」から始まります。
が、ここからすでに難しい
個人的には車に乗っている描写以外においては、本編よりも読むのに苦労しました…。

ただ、本編を読み解く際に大事な考え方(華厳経による世界の認識のあり方など)を紹介しているので、ここで理解はしなくとも言葉としては覚えておいた方が良さそうです。

ちなみに、本書を一通り読み終わってから「まえがき」に戻ってくると最初よりも読みやすく感じました。
なので、もしここを読んでみてピンとこなかったら一旦飛ばしてしまうのもありだと思います。

このまえがき部分は、PLANETS公式の「PLANETSチャンネル」より無料公開されています。
【無料公開】落合陽一『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化された計算機による侘と寂』まえがき

第1章

ここでは「デジタルネイチャー」がどういった思想かを復習を兼ねて紹介しつつ、次の2つのテーマを提示しています。

  • テクノロジーと自然の一体化
  • 脱近代

「近代」を指す1789年の産業革命〜1945年の第二次世界大戦終結までの歴史、トーマス・エジソンの発明したものを追いながら、21世紀になった今も社会的に概念が更新されていない現状を解説。
しかし「産業革命」のような技術革新の上に成立したのが「近代」であるなら、「脱近代」もまた、さらなる技術革新が引き金になる。つまりデジタルネイチャー化した世界こそが脱近代に繋がる、といった流れ。

第2章

「デジタルネイチャー」が著者によって突然この世に誕生したものではなく、過去の研究者たちから引き継がれてきた思想であることを紹介。
そこからさらに、身近なところからすでに始まっているデジタルネイチャー化のストーリーへと展開していきます。

第3章

私たちが今、当たり前に使っているインターネットが、オープンソースの思想で開発されたソフトウェアによって成り立っている事実確認からはじまり、近い将来、今の社会を牛耳っている「資本主義」がオープンソースソフトウェアによって飲み込まれ、新しい全体主義、倫理観が醸成されていく将来を描かれています。

ここでは、ビットコインで一躍有名になった「ブロックチェーン」による分散システムによる信用経済についても触れているので、仮想通貨に興味を持っている方にはオススメの章。

第4章

デジタルネイチャー化していく社会が、いかにしてダイバーシティ(多様な価値観を受け入れる社会)へと向かっていくかを解説。
特に、私たちの使っている「日本語」では世界の事象を表現しきれていない事実と、言葉と概念をアップデートしていく必要性がポイントになります。

第5章

AIが発達し、私たちの働き方が変わっていくことについて。
本章のタイトルにある「二極化」とは、機械による指示のもとに働く人と、AIの統計値から外れたイノベーションを起こす人で分かれていくであろうことを指しています。

また、今後も支配力を高めていくであろうプラットフォーム(Google、Apple、Facebookなど)に対し、対抗する手段としての「ラボドリブン」についても紹介。

第6章

デジタルネイチャー化が進むことで、私たちの身体・精神が変わっていくことについて書かれています。

身体では、もともと人が備える手や足、もしくは視力や聴力よりも高性能なパーツ(義手・義足など)が生まれる。そのうち、人は身体を拡張していくようになり、ゆくゆくは宇宙空間のような真空状態でも生きられる身体を目指すかもしれない、という話しが展開されます。

もう一方の精神については、機械と人間が曖昧になっていく中で、個人が持つ人間性についても捉え方が変わっていくことが書かれています。
例えば「死」ですが、人間が生物的に死を迎えたとしても、その人の思考、言葉、癖、仕草などがインストールされたBotが動いていたら、本当にその人が死んでしまったことになるのか。など。

終章

本書の最後となる章では、著者の作品(自身が主催するラボの作品も含む)を通して、イメージと物質の間にある表現可能性を模索している様子が語られます。

先日、著者の個展で撮影した「鯖」

感想

まず、本書は次の2点において難易度が高いと感じました。

  • 用語の理解
  • デジタルネイチャー化していく世界の想像

1つ目の「用語」については丁寧な注釈が適宜あり、さらに分からなければググれば一発で解決するのでさして問題ではありません。

大変なのは2つ目で、本書に書かれている「近い将来、こうなっていく」という想像を膨らませる部分。
このトライは本書を読み進める上で幾度も無く訪れますが、脳がまるで筋トレしたような疲労感と心地良さに包まれます。
そして想像が明確になるほどワクワクしてくるので楽しい。

著者の伝えたい内容を100%理解したとは到底いえないけど、自分が今まで持っていた社会の将来像はアップデートできている実感は間違いなくあります。
本書を手に取った多くの方も、きっと同じように想像力が拡張されていく体験をされたのではないでしょうか。

自分が気がついていないところで、すでに数多の計算機自然が脈打っている。
テクノロジーの発展は「AIが人から仕事を奪う」のようなネガティブな発想も散見されますが、僕はデジタルネイチャー化していく社会の流れをポジティブに捉えて楽しみたい。
そのためにも、今からできること(慣れること)を意識して準備していこうと思います。

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