「納品」をなくせばうまくいく
著者:倉貫 義人
出版社:日本実業出版社(2014/06/20)
形式:単行本(¥1,728)、Kindle(¥1,512)
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本
本書はソフトウェア開発という業界の新しいビジネスモデルについて、著者自身が運営されている会社での事例をもとに解説した一冊。
業界を取り巻く現状についても書かれているので、ソフトウェア開発に携わる方はもちろん、Web制作に携わる方、ソフトウェア開発を発注したいと考えている方、業界に興味のある学生にとって参考になる情報が詰まっています。
ソフトウェア開発を業者に発注する場合、一般的には「一括請負」が主流です。
お客様が必要とするソフトウェアについてヒアリングし、納期と金額のお見積もりを行い、受注が決まったら要件定義〜開発まで行って、動作検証をして納品。
業界の方でなくても、ソフトウェアやシステム関連の発注を行ったことがある方はご存知かと思います。
本書では、上記の流れで行われるソフトウェア開発の欠点を示し、それを解決するために考えられた新しい開発会社のビジネスモデルを解説しています。
それが「納品のない受託開発」。
「納品」がないとはどういうことか。
それは、ソフトウェアを「納品」して終わりにするのではなく、使い始めてからも改良していくということです。
こうしてみると、納期までの完成リスクを開発会社が負う必要がなくなるので、過大なバッファを避けることができます。
また、従来の開発手法では後工程で形になってきて、はじめてお客様がソフトウェアを触ってみることができました。
なので、触ってみて「少し違う」と思った場合の変更や、運用し始めて気がつく変更にも柔軟に対応することが難しいという欠点、そして「形になるまで分からない」というリスクが存在していました。
「納品」がなければ「完成したので終了です」という仕切りがなくなり、気になる点の改良や、運用し始めてからの気づきも随時反映していくことができるようになります。
これは、「納品」というゴールを目指して開発する開発会社と、事業を進めていくためにソフトウェアを使っていきたいというお客様のミスマッチを解消する仕組みです。
「納品のない受託開発」は良い点がたくさんありますが、開発するソフトウェアの種類によっては「一括請負」の方が適している場合もあります。
2つのビジネスモデルの使い分けを確認するために、それぞれのメリット、デメリットを挙げてみようと思います。
比較してみると、「一括請負」は必要なソフトウェアが決まっていて、一定の納期で作り上げていく中規模〜大規模なシステム開発において有効なものだと分かります。
対する「納品のない受託開発」は、作りながら/運用しながら改善していくプロセスが続くため、「こんなシステムを使いながら事業を進めていきたい」といった、事業に合わせて改善を反映していくようなシステムが求められます。そのため、改善のサイクルがスムーズに回る必要があるため、比較的小規模な開発に向いているものだと考えられます。
僕自身はWEB制作を行っています。
通常のWEBサイトの制作に加えて、WEB上で動作するシステムの開発も請け負っています。
この立場で読んでみると、システム開発においてはまさに本書の内容は合点がいくものでした。
手探りをしながらではありますが、「納品しない受託開発」を取り入れていけたらと思います。
そして、少しアレンジしつつではありますが、WEBサイトの運用についても同じように出来るかと考えています。
本書の中で「お客様の顧問エンジニア」という表現が出てきますが、WEBサイトの運用についても同様なことができる可能性を感じています。
WEBサイト自体は企業が「所持」している必要があると思いますが、常に改善しく点はWEBサイトにおいても同様です。
WEBサイトを「形だけ作ったけど、更新する人がいないから放置…」という企業は結構多いです。
個人的には「まだまだ出来ることがあるのに勿体ない」というのが本音です。
そこで、「顧問WEB担当者」(語呂が少しダサい。笑)というポジションとして運用をサポートしていく、という形に可能性を感じています。
システム開発においては、正直に本書の内容に沿って動いてみたいと考えています。
最初は、ずっと継続して改善していくにしても、改善する内容と作業量がずっと一定ということはないので、何もない時期はどうするのかという疑問がありました。
しかし、ソフトウェアを「所持」ではなく「利用する」というスタンスであれば、辻褄が合うのかと思います。
本書で書かれているビジネスモデルは非常に合理的で、必要としている人が多いものだと感じています。
WEBに携わる技術者の方は、こういう働き方があるという一つの事例になるはずです。
しかし、個人的には「自社にあうシステムを導入したいけど、どうしたらいいか分からない。」と考えている方にこそ、本書を読む価値がある読者なのではないかと思います。
理由は、著者の会社に発注した企業の実例が、社名を含めて紹介されているためです。
そこでは、他の「一括請負」を行う開発会社との違いが明確に書かれています。
結果として、「システム開発への発注」という少し分かりにくい部分について知ることができ、これから開発会社を探すにあたっての一つの指標になります。
コメントありがとうございます!
運営の参考にさせていただきます。
ありがとうございます。
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