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「数学文章作法 基礎編」を読んだ

「数学文章作法 基礎編」を読んだ

数学ガールシリーズで有名な結城浩さんによる、読者に伝わりやすい理系の文章の書き方が解説された一冊。

本書の要約

第1章 読者

書き手にとって最も大切な「読者のことを考える」を認識するための章。

  • 読者の知識
    →何を知っているか。また、文章が進むと知識が変化することも留意
  • 読者の意欲
    →「なるほど!」のような発見、学びは意欲を高める。文章を書く順序に気をつける
  • 読者の目的
    →何のために読むのか。目的を意識して理解した上で書く

第2章 基本

文章を書く上では「形式」と「文章の構造」に注意する。
この2つを整えることは、読者のことを考えることにも繋がる。

伝えたい内容が大事だからこそ、ルールを守った見せ方が大切。
文章の書き方によって読みやすくなったり、逆に読みづらくなってしまうことがある。

3章 階層と順序

文章全体を俯瞰して、「内容の階層化」と「順序」を意識する。
階層は文章をグループ分けする機能と、全体から見たときの内容の位置付けが分かるように。
順序は時系列、空間(上から下、左から右、時計回り)、難易度などが一定の方向に向くようにする。

書体の切り替えで何が書かれているか判断しやすくする工夫についても触れられている。
例えば強調、アルファベット、日本語でフォントを変えるなど。
技術的なことを説明するときは、数式やプログラムのソースコードについても文字を切り替えることで、書かれている内容のカテゴリー分けをすることができる

第4章 数式と命題

数式を使った文章において、読む方が混乱しないような書き方の工夫。

  • 不要な用語は省く
  • 「あれ」「これ」などの指すものを明確にする
  • 「…(てんてん)」
  • 漢字における「最小」「最少」のようなニュアンスの違いと適当な使用を心がける
  • 文章の心地よい長さ

第5章 例

きちんと対応した説明と例を組み合わせると、読者は具体的な理解を得られる。
例は典型的なものを示す必要があり、典型的(代表的)なものと極端な例を示すと、より理解が深まる。

説明において「あてはまる例」と「あてはまらない例」の組み合わせも理解を助ける。

第6章 問いと答え

読者に適切なタイミング(章末など)で問いを投げかけると、理解を促すことができる。
問いには必ず答えを用意する。

問いに対して答えを不要に先延ばしにしたりする、引っ掛けをすると信頼を失う可能性があるので注意する。

第7章 目次と索引

目次は文章全体のアウトラインを知るために使われる。
良い目次を作るには良い見出しが必要であり、良い見出しを作るには良い文章(内容)が必要になる。

目次の作成は「手間」と「間違い」を減らすためにソフトウェア(LaTeXなど)の目次作成機能で作る。

索引は特定の用語に関連するページを探すのに便利。
1つの用語に対して参照するページが多いとどこを見ればいいのか迷うので、用語の粒度を調整したり、本当に参照ページが適切かを考える。
索引の指定は著者の仕事、実際に索引のリストを作る部分はソフトウェアに任せる。

第8章 たったひとつの伝えたいこと

最終章は1章〜7章の復習と、改めて「読者のことを考える」の大切さが書かれている。

感想

「文章の書き手が、文章を読む人のことを考える。」

言葉にすると当たり前のことに思えますが、自分にとっては「どこかに存在している人」というか、実感の湧かない存在になっていました。
そこで本書を読み、自分の書いた文章がどのような読者に届いて読まれるのかを考える機会になったと思います。

例えば当サイト「GRAYCODE」の場合で考えてみると、想定される読者はプログラミングで部分的に行き詰まった方を想定しています。
行き詰った時にGoogle検索で「PHP MySQL 更新」のようなキーワードで調べたら辿り着いた方に、欲しい情報をサクッと、逆引き辞典のような使い方をして頂けたら、ということを考えて記事を書いています。

自分も制作で行き詰ったらキーワードで検索してみて、欲しい情報をピックアップしているので…。
自分自身が困ったときに、「この情報が検索してすぐ見つかったら助かるな」という実体験がベースになっています。
このことを踏まえつつ、解決策と原因、もしくは技術的な情報をサッと提供することを目的にサイトを運営することにしました。

本書を読み、そもそも理系向けの文章を考える以前に、読者にとって分かりやすい文章を書くための基本知識を総復習することができました。
基礎的な部分から満遍なく丁寧に解説されている内容に、著者の「読者に伝える情熱」を感じます。

理系向けであるかどうかに関係なく、文章を書く方にとっては有用な内容です。
どのような形にせよ、文章を書く機会のある方にはオススメできる一冊でした。

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