3.11の被害について、現地の人々の声が詰まっている
多くの日本人の記憶に残っているであろう、2011年3月11日の東日本大震災。
大きな地震と、津波による福島第一原子力発電所の事故。
この震災は日本のみならず、世界的にも「第2のチェルノブイリ」として注目を集めることになってしまいました。
福島では、今もなお避難解除されない地域が残り、さらに避難解除された地域においても復興における問題が山積しています。
今でも時々ニュースで流れる、福島第一原発事故に関連した東京電力と地域住民の方々との裁判の様子を目にする度に、6年が経過したにも関わらず未だイマイチ復興が進んでいるという実感のようなものが掴めていません。
本書を手に取った経緯
前置きが長くなりましたが、ここで率直に告白しておくと、僕自信は3.11の事故当時について、または事故後の状況について、そこまで積極的に情報を集めていた訳ではありませんでした。
関連する書籍もそれこそ山のように出版されていますが、書店で立ち読みした程度。
そんな自分が、しかも6年経過した時点で出版された本書を手に取った理由はなにか。
それはズバリ、著者の姓が自分と同じだから。
石戸(いしど)ってありそうな姓ですが、実は意外と珍しい。
そこへたまたまTwitterで知った著者をフォローしているうちに、どうやら著書を出すらしいことが判明。
これは買うしかないだろうと。
本書の取り扱うテーマよりも、むしろ「姓が同じ」という不純な動機がきっかけとなったのでした。
最後まで読まずにはいられなかった
家族を失い、その喪失感、これからの時間の過ごし方と向き合う姿勢。
東電の従業員として、福島第一原発で大地震と津波、そしてその後の事故を直に経験した人。
技術者でも想定していなかった「津波」というリスクと、発生したトラブルに対応する様子。
県外からも、福島県の人々や農産物の放射線量を、時間をかけて地道にデータを積み上げ、世間のネガティブなイメージと闘い続け復興に貢献する研究者。
それぞれが異なる立場にいながらも、震災とどう向き合い、今という時間を生きているか。
貴重な「生」の声、想いに触れることができたように思います。
本書を手に取ったのが9月上旬。
しかし、他の本と併読していく中で、正直にいうと本書は読み進めることに苦労しました。
生々しいリアルな内容だけに、「よし、読むぞ」と気持ちに勢いをつける必要があった。
読むことを途中で中断することもできたけど、本書に書かれている内容は一人の日本人として、「知っておかなければならない、忘れてはいけないことが詰まっている」とどこかで確信していた部分があり、読まずにはいられなかった。
直接原発事故に関わることからではなくても、観光でもなんでもいいからまずは行ってみて、街に触れて福島を知る。
そういったところから少しずつでも、福島に興味を持って、ゆくゆくは震災からの復興についても考えていけたらと思います。