さよならインターネット
著者:家入 一真
出版社:中央公論新社(2016/08/08)
形式:新書(¥886)、Kindle(¥820)
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本
家入一真(いえいり かずま)さんの著書「さよならインターネット」を読んで自分なりに感じたこと、考えたことを書く記事の第3弾。本書は、長くインターネットに携わってきた著者が、すっかり私たちの生活に浸透した「インターネット」について、その考えを綴った一冊。
今回は4章を読んで、自分なりに噛み砕いた内容を書いていきます。
前章で触れてきた、これからのインターネットはどうなっていくかについて、より具体的に書かれているのが本章です。
まずは、規模自体は拡大を続けているけれど、私たち個人の視点では狭くなってしまったインターネットについて。
これは、日々向上している利便性の向上と繋がっています。膨大なページ・コンテンツに溢れたインターネットは、求めた情報に可能な限り速くアクセスできるようにインフラが整理されてきました。身近な例を挙げると、次のような場所。
これらは、独自のアルゴリズムやAIが自動的に自分の好み・傾向に最適化してくれることと、SNSにおける自分の気になってる人とのみ繋がるという人力の組み合わせです。一言で言えば、「パーソナライズ」。
この機能のおかげで、自分の欲しい(であろう)情報を自動的にフィルタリングし、集めることができるようになりました。もはや自分の気づかない場所で、このパーソナライズが実施されているのが現在のインターネットです。
自分の価値観に近い情報にのみアクセスすることなので、情報を集めることにおいては非常に効率の良いシステムです。しかしその一方、自分とは異なる意見と偶然に出会う機会を失っていることでもあります。
さらには、こうしたパーソナライズが当たり前になることで、自分と意見が異なる人に対する免疫すらも失われてきているように思います。
これはSNSだと分かりやすいかもしれません。通常、TwitterやFacebookで自分から繋がっている人(フォローしている人)は、自分が興味ある人に絞られていると思います。逆に、自分にとは違う意見を積極的に繋がっている人は、そんなに多くはないでしょう。
例えばAKB。推しているメンバーが同じ人はもちろん、別のメンバーを推している人とも「AKBを応援している」部分は共通です。なのでとても親近感がある。
一方で、AKBに対して否定的な見方をしている方を偶然見つけたとします。適当に思いついたことを書くと、「最近のメンバーは目立つ人がいないね」とか、「口パク多いなー」とか、「ダンスのクオリティ下がってきてるよね」とか。ファンのように肯定的な見方ばかりではなく、否定的に見る人もいるはずです。(ちなみに僕はライトな方だけどファンの側)
こういった自分とは異なる見方をする人(意見が異なる人)を積極的にフォローすることって滅多にないですよね。僕もないです。でも、こういった意見があるからこそ、肯定的に見ている人たちの繋がりが大切に思えたり、意見交換できたりといった良い影響もあるように思います。
淡々と「意見が違う人は不要」と判断するのではなく、たとえ偶然でも交流があった方が、様々な意見を持った人がいることに気づくことができ、またそれこそが「世界の真実」として認識できて、むしろ建設的な行動を取れるのではないでしょうか。
最近なにかと起こりやすい「炎上」。もしくは、特定の人物を「悪者」にして、みんなで叩きまくる公開処刑。
本書では、これらのことが起こりやすい原因の1つが「パーソナライズ」にあると言っています。これは納得。
どういうことかというと、先述した通りパーソナライズが進んだことで自分と意見の違う人には出会いにくくなり、免疫も減りました。その結果、意見の異なる人に対して「なんだこいつ」みたいな敵対心を持ちやすくなってしまった。そして、意見の違う人は叩いて潰すという行動に繋がっているように思えます。
気持ち悪いのは、こう言った炎上が起きたら「自分の意見は正しい」と信じて大義名分を振りかざし、意見を押し付ける人。これはもはや一種のエンターテイメントでしかなくて、悪者をやっつけてスカッとした気分になり、ストレス解消をしたいだけな人が多いように感じられます。その証拠が、自分は安全な立ち位置にいたいからという理由で「匿名」で発言していること。
さらに最近は、こういった自分の参加できそうな炎上案件をわざわざ探す「警備員」が増えました。こうなってくると、著名人などは些細なことで炎上に発展するリスクが高く、非常にやりづらい。
そこで、辿り着いた1つの答えが、最近流行っている会員制の「オンラインサロン」です。
お金を払って、実名で参加をするので、ここには真面目に関わりたい人しか集まりません。そのため、匿名の傘で自分の身を守っているアンチは非常に入り辛い環境です。そのため、主催者にとっても、参加者にとってもお互いが心地い場を作ることができます。
このようなオンラインサロンは代表的な例となりますが、インターネットは今後ますます閉ざされた「関係者だけの場所」にセグメントされていく。これは前回の記事で触れた「インターネットのパラレルワールド化」に繋がって行きます。
ここまでの結論としては、インターネットの世界を心地良い場所として保つには、同じレベルの認識を持つ人同士が繋がっていることが前提になっているようのではないかということ。匿名性を武器に、自分勝手な解釈を他人に押し付ける人がいたら成立しない。
以上、4章を読んで、自分なりに今後のインターネット上で活動する上で知っておくべき大事なポイントだと感じました。