さよならインターネット
著者:家入 一真
出版社:中央公論新社(2016/08/08)
形式:新書(¥886)、Kindle(¥820)
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本
家入一真(いえいり かずま)さんの著書、「さよならインターネット」を読みました。長くインターネットに携わってきた著者が、すっかり私たちの生活に浸透した「インターネット」について、その考えを綴った一冊。
ペパボの創業者であり、今でもクラウドファンディングのプラットフォームである「CAMPFIRE」を運営するなど、主にインターネットを使ったサービス(プラットフォーム)づくりを精力的に行っています。ペパボの代表的なサービス「ロリポップ」は非常に有名なレンタルサーバーでご存知の方も多いかと思います。
飲食店の経営をされたり、都知事選に立候補したりと活躍の場は広いです。特に都知事選では、インターネットの活用方法が非常にうまく、これからの政治における見本となるような戦い方でした。
世間一般的なイメージのIT起業家とは毛色が違う、「IT起業家:家入一真」という感じ。人間味のある暖かい存在感が魅力。著者自身についてより詳しくは、自身のこれまでの経緯をまとめた著書「我が逃走」(平凡社)がオススメ。ユニークな道を歩んでいて面白いです。
本書は著者自身が約20年間インターネットと共に歩んできた今までを振り返りながら、時代とともに、私たちの生活に溶け込むことで変化してしまったインターネットについて、その全容を著者のフィルターと通して知ることができます。
今回は、本書より1章と2章に書かれている内容をまとめていき、自分なりに感じたことを書いてみました。
前半に位置するこの2つの章では、著者のインターネットとの出会いから、心の拠り所になっていた時期、そしてインターネットの素晴らしさを多くに人に届けるために起業するまでの流れが書かれています。
読んでいて強く感じたのが、インターネットを使う人が変わっていくにつれて、その世界が変わっていく様子。僕自身が家にパソコンがきてインターネットを使い始めたのが2000年の後期。評判がすこぶる悪かったWindowsMe。
パソコンの市販が始まり、ネット回線も各地に整備され始めた1995年〜2002年あたりまでのインターネットの初期時代。比較的ギーク(専門家/オタク向け)な人たちが多く使っていた時期でもあり、コミュニティ意識も強くありました。分かりやすく言えば、現実世界とは切り離された「デジタル空間の秘密基地」。こんな場所でした。
しかし02年以降、本格的にはじまった個人によるホームページ開設・運営のブームにより、いよいよギーク以外の人たちがインターネットを1つのツールとして使い始めます。この辺りからパソコンが1つの家電として、一家に1台あるみたいな認識になってきたところかと思います。
そして03年には「セカンドライフ」が登場し、04年以降には光ファイバーも普及し目覚しいスピードでグングン速くなるインターネット回線。1人1台のレベルで普及した携帯電話。これらの要素が重なり、ギーク以外の人がドッと押し寄せ、インターネットは繋がることが当たり前の日常ツールとして使われるようになっていきました。
その結果、「デジタル空間の秘密基地」という役割は終わりを迎え、むしろ現実世界へと近づいていきます。
例えば、その後に登場したSNS。日本の代表的なものは当初会員からの招待制で広がっていった「mixi」。ここで、インターネットの世界に現実世界の人間関係が溶け込んでいきます。さらに、mixiの後に急速に広がった「実名主義」のFacebookによって、いよいよSNSアカウントが現実世界とリンクし、一種の身分証として機能し始めました。そして、95年〜00年前半までの心地良さは失われていき、現実世界の延長線上としてのインターネットとなります。
以降は最近よく耳にするようになった「炎上」をはじめ、匿名性は薄れ、インターネット世界で起きたことが現実世界にも大きな影響を及ぼすようになっていきます。2チャンネルなどで書いた軽い冗談も過剰に受け取られ、標的にされ、SNSや検索で探ぐる粘着質な人も現れ、個人情報が晒される。ちょっと恐ろしい世界です。
このように、個々人にとっての現実世界の延長線上になってしまいましたが、さらに現実世界とリンクしたことを象徴する点が本書には書かれていました。
「個人もメディアになる」と信じて、希望を抱いていた人は多かったことでしょう。しかしふたを開けてみれば、影響力を持っていたのは、いわゆる「芸能人ブログ」ばかり。しかもその影響力は「ステマ騒動」というネガティブな事件で顕在化しています。(「第二章 さよならインターネット – その輪郭を喪失するまで」位置No.708より引用)
これは本当にその通りのように感じていました。アメブロを始めとしたブログでも、芸能人のものが前面に押し出されています。そこで堂々と繰り広げられるステマ。全くステルスになっていないけど。
そのことを悪いと言うつもりは全くありません。むしろ、宣伝として新しいサービスや商品を広げていく上ではとても重要な存在だと思っています。ただ、個人的にはもっと多くのブログ発、ネット発で有名になった一般人が出てくると期待していた部分があって、そのことに歯がゆい想いがあリます。
ただ、最近はYouTuberのような素晴らしいコンテンツを生み出す一般人だった人が影響力を持つシーンが増えてきました。ブログについても、ちきりんさん、イケダハヤトさんなどの著名人が登場しました。個人発メディアの時代は、想像より少し遅いタイミングながらも、これから広がっていくのかもしれませんね。
以上、2章までを読んで考えたことでした。これ以降の章についてはまた改めて書いていきます。
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