これからの世界をつくる仲間たちへ
著者:落合 陽一
出版社:小学館(2016/03/28)
形式:単行本(¥1,404)、Kindle(¥884)
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本
本書は落合陽一さんによる2冊目の単著。コンピューターが今後発展していくことによって、私たちの生活がどんな影響を受けていくかを想像することのできる一冊。
この本は絶対読んだ方が良い!
理由はシンプル。コンピューターがこの先、どのような形で生活に溶けこんでいくかを想像できるからです。想像する形は人それぞれだと思いますが、心構えみたいなものができると思います。
想像していた内容が現実になるか否かよりも、将来のことを考えておくことは、それをしていない状態よりもずっと上手く対処できるのではないでしょうか。この差は大きい。
本書の中で、コンピューターが様々な雑務・調整作業をしてくれるようになると、いわゆるホワイトカラー(管理職)として働く人々は能力が高い一部を除いて仕事がなくなっていくと言っている部分があります。その結果、今まで高給取りだったホワイトカラーがいなくなる分、ブルーカラーとして働く人々が高給取りに代わっていく、という話しです。
これ、本当その通りだと思いました。というか、そうなるべきです。
自分の業界でいうと、web制作会社には「ディレクター」という立ち位置の人がいます。ディレクターとは制作スケジュールを作成・調整したり、発注した会社の担当者と社内の技術者の間に立ってやり取りを調整し、案件がスムーズに進むよう取り計らう人です。通常、ディレクターは技術的な部分に精通している方が良いとされます。技術的な部分が理解できていると、実装部分のどこにリスクがあるか、工数がかかるかの見通しを立てられるためです。しかし、残念ながらこの部分が明らかに欠如しているディレクターが少なからずいることを、現場にいて痛感してきました。直接的な言い方をすると、「この人必要?」と思ってしまうわけです。
案件に関わる人が多いと、当然コストも大きくなります。例えばディレクターとデザイナー、実装を行うコーダーの3人で案件を進める場合、3人分の工数がコストとして掛かるわけです。僕はここが決定的に無駄だと思いました。もしデザイナーかコーダーの人がディレクションできれば、2人分の工数で済みますよね。こちらの方が合理的ではないでしょうか。
web制作を受注する場合は成果物や納期を守ることでクオリティ、サービスの質として評価されると思いますが、上記のように無駄な工数を削って不要なコストを省くことも1つのクオリティだと思います。
誤解しないで頂きたいのですが、ディレクターの仕事を過小評価しているわけではありません。コミュニケーションの仕事ってエネルギー使うので大変です。でも、web制作をここまで細分化しなくてもいいんじゃないの?と思います。その思いがあったことが僕の独立した経緯です。
本書の話しに戻します。
本書は、今すでに始まっているコンピューターが人に置き換わって仕事をしている例も紹介されています。その上で、そこからさらに進むとこうなっていくという将来像にシフトしていくので、現在の延長線上として私たちがどうなっていくのかを具体的にイメージすることができます。非常に平易な言葉で書かれてので、専門用語を理解していないと分かりづらいといったこともないでしょう。
個人的には前著「魔法の世紀」とセットで読むことをお勧めしたいですが、本書の方が内容としては分りやすいかと思いました。前著は今までのコンピューターが発展してきた歴史についても多くページを割いているため、元々興味ある方でないと読み進めるのに苦労するかもしれません。内容もギッシリしています。それでもやっぱり、前著と合わせて読んで頂いた方が理解は深まるためセット読みをお勧めします。
本書はタイトル通り、これからの世界をつくる人たちに向けられた内容です。自分が魔法をかける側として生きるか、魔法を享受して生きていくか、コンピューターが生活により溶け込んでいく世界で、どういうスタンスで生きていくかを考える機会になるでしょう。高校生、就職活動を控える学生、今の仕事に疑問を持つ社会人には特にお勧め。